360万パワー

1977年生まれ

日本の研究室は部活動説

私は一応修士号を持っているのですが、こういう事は自分にもあり得たかもしれないと思うと怖い気もしますし、一方で自分には起こり得なかったような気もします。

大学院、中退することに。 : ボルボラのブログ:理系博士課程中退、求職中

この方と同じように私は化学をやっていました。私は博士課程、コースドクターの器ではないと思ったのでキッパリと修士課程で終わらせましたが、ありがたい事なのか学科の教授の何名からか「お前はドクター行くと思ってた」みたいな事を言われることもありました。

自分としては所属していた研究室のドクターやポスドクを見て、とても同じようにはなれないと感じたので器ではないと思ったわけです。

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大学の化学系ではこちらもホットエントリー入りしていました。私が学生の頃は同じような内容で、場所は中国じゃなくてアメリカの研究室で、アメリカの研究室はすげーぜ!みたいな内容はよく聞きました。ドラフトが2つしかなかったり毎回溶媒を蒸留するのはちょっと極端な環境のようにも思えますが、環境がよくても研究室によってはそれほど成果はあがらないような気もします。

例えば冒頭のブログの方は、なかなか結果が出なかったことが中退の一つの原因であったようですが、専用のドラフトがありコックをひねるだけで精製済みの溶媒が出てきたら結果が出ていたかというと、そうではないと思います。実際のところはわかりませんが、結果が出ない理由は能力や作業量だけに由来するわけではないと思います。アメリカや中国のような恵まれた環境で実験の効率がよくなることは確かですが、結果につながらるかは別ですし、この上ない環境はより結果が求められ逃げ道が少なくなりドロップアウトに繋がる気もします。

ところで、私は化学系しか知りませんが、日本の研究室は部活みたいな感じで、海外の方はプロスポーツのような印象があります。

中学や高校で行われる日本の部活動は海外では同じような形態ではないそうです。海外では中高生が毎日スポーツを行うとしたら、日本の部活のような全員参加のものではなく、それはプロのアスリートを目指すようなエリートが集まって行うそうです。サッカーのユース組織みたいな感じなんだと思います。

海外の研究室の印象もそんなイメージがあり、でっかくて有名な研究室はプロアスリートを目指す人が集まっている印象があります。もちろんそんなことはないと思いますが、そういうイメージです。対して日本の研究室は全員参加の部活です。

とはいえ、日本の研究室にもプロアスリート志望の学生もいます。そもそも研究室のボスがそういう学生で実際に勝ち残りプロになった元学生です。そういう方は恐ろしく頭がよくて、アホみたいに体力があったりします。冒頭のブログの方が所属していた研究室のボスもそんな感じなんじゃないかと思います。自分と同じペースが出来るものだと思ってやらせようとするけれど、中々ついていけるものではありません。中にはついていける学生もいるでしょうし、1回躓いたら上手く立ち上がれなくなるという学生もいるでしょう。プロアスリートを養成することを重視するのであれば、ついて行けない学生がある程度出てくることには目をつぶることになるでしょう。

研究室のボスは研究者でもあるし、教育者でもあります。しかし、この2つの役割を両立させるのは中々難しいのでしょう。ノーベル化学賞を受賞した野依先生は弟子を育てないことで有名です。一方で野依先生のライバル?といわれた向山先生は多数のお弟子さんを輩出しています。教育者としては向山先生に分があるでしょう。ただ、向山先生の要求は非常に厳しかったそうです。聞いた限りでは、今ならブラックと言われることは間違いありません。それでもお弟子さんが沢山巣立ち、活躍しているのはプロ志望が集まっていたからでしょう。

有限のリソースを十分に活用するには、プロ志望の研究室と部活的な研究室をきっぱり分けたほうがいいのかもしれない気もしますが、きっと根本ではありません。