360万パワー

1977年生まれ

古本はどうやれば高く売れるのか、どうしてネット買取りは安いのか古物商が説明する

anond.hatelabo.jp

古物商もやっているものですが、この増田は古物商じゃないんじゃ?と思う内容だったので、どの辺りがそう思ったのか、買取をどう選んだらいいのか書きたいと思います。

買取りの基本

まず買取る側は古物商という許可を有しています。古物商というのは盗品が市場に出ないようにする仕組みで、警察とのお付き合いでもあります。

本などを買取ってもらった経験があればわかりますが、本人確認があったと思います。 これは盗品が出回らないようにする仕組みの一つです。また、買取りが可能な場所は古物を売る本人の自宅か、古物商が届け出た事務所・店舗のどちらかだけです。路上や勤め先での買取はできません。これは業界の自主的な取り組みではなく、法律で決まっています。これも盗品が出回らないようにする仕組みです。 法律による決め事ですので、ネット買取りでも当然これらの決まりを守る必要があります。

ネット買取りでは対面でないため、自宅であることを確認する必要があります。その確認のために宅配業者が行っている受取本人確認を利用します。古物商は梱包資材や買取誓約書のようなものを送り、その受取と買取る古物と一緒に戻ってきたことをもって本人確認とします。免許証のコピーや住民票の写しだけでは盗品を買い取らない仕組みとして十分ではありません。

ネット買取りは古物商にとって本人確認にすら手間もコストもかかる買い取り方法です。本人確認のコストの他に送料もかかります。梱包用段ボールの有無は買取り価格に影響するような大したコスト増ではありません。

店頭での買取りなら、本人確認にコストはかからないし、買取り商品を持ってきてくれるので送料もかかりません。買取りのコストは店番だけです。

なぜネット買取りを行うのか

コストをかけてまで買取る理由ですが、古物商の仕入れは基本的に買取りしかないからです。 アレはいくらで売れて利益がどのくらい出るのか分かっていても、買取らなければ商品はないので売れません。絵に描いた餅です。

古物商というのは売るのは案外難しくありません。一方で仕入れは非常に難しいのです。古物商を回すボトルネックは常に仕入れです。

ヤフオクに出すと、こんなの売れるのかな?というのが、それなりに売れた経験があるかもしれません。レアものでなくても、売れてしまいます。オフハウスに行くとこんなの売れるのかな?という家具が置いてありますが、一ヶ月もしないうちに売れています。

売るのはなんとかなりますが、仕入れはぼけっとしていると何も出来ませんし、商売になりません。だから買取りコストが嵩むネット経由の買取りも行います。 さて、買取りにかかるコストは誰が負担するのでしょうか。

値段の付け方

売値と買値についても少し説明します。 売値が1万円の時、買値はいくら、とは決められません。1週間あれば1万円で売れるものと、1年あれば1万円で売れるものを同じ値段では買取りません。当然、1週間で売れる方が高く買取ります。

古書はやっていないのでよくわかりませんが、古書でも同じはずです。時間をかければ売れるとしても保管場所が必要なのでタダでもいらないケースも多々あると思います。古書の場合は古紙として買い取ってもらえるので、大手はそれほど困らないと思いますが、個人経営の場合は保管場所のコストを考えると厳しいと思います。

未開封についてですが、警察に怒られるので未開封として買取る業者は非常に少ないと思います。なぜ未開封を避けるのかというと、一つは盗品の可能性があるから。古物商は盗品を流通させない仕組みなので、盗品と疑われるようなものは扱えません。

ゲオが未開封の盗品を買取り問題になりましたが、個人経営の古物商が同じことをやったら古物商取り消しで廃業待ったなしです。

未開封を扱わない理由のもう一つが金融品をやめろと言われていこともあります。金融品というのは、クレジットカードの現金化のことで、クレカで買ってすぐに売ることで現金化する仕組みです。デジカメなんかではよくあったのですが、今は怒られるので真っ当な古物商はやりません。

このような理由から10年くらい前から未開封とか新品を謳うことはやらなくなりました。少なくとも大手はやりません。ヤフオクは新品で出品出来るのが不思議でなりません。

オススメの売り方

ヤフオクやアマゾンで売るのが一番でしょう。ただし、いつ売れるのかわかりませんし、いますぐ現金が欲しいという場合には向いていないかもしれません。マンガの場合はセットにすればヤフオクですぐに売れそうな気はします。ただ、手間が面倒、やり取りで厄介事があるかもしれないから怖い、など億劫になるかもしれません。 古物商はその辺の億劫さをお金で代行しているといえます。 さて、肝心の億劫さを代行する者をどうやって選ぶかですが、本ならブックオフでいいんじゃないかと思います。

古物商をやっていることもあり、色々なものを大手古物商に買い取ってもらっていますが、ブックオフは案外買取価格を頑張っています。 ブックオフで買い取ってもらった本はこれまでに10万円くらいはあると思うのですが、売れるか売れないかわからないような本にも値段が付くことが多く、1回の買い取りで買取額が1冊平均で30円以上ということも珍しくありません。 ちなみにブックオフとオフハウス、ハードオフは創業者が仲がいいというだけで別会社です。オフハウスやハードオフの買い取りは玉石混淆なのか、買い取り価格は安いと思います。セカストも似たようなものなので、専門性の薄いリサイクルショップの買取価格は難しいかもしれません。

さて、なんとかという買取店についてですが、古物台帳を残す気が最初からないようにみえます。古物台帳というのは、買取る際に名前、住所、職業などを記入させられると思いますが、あれを指します。法律により3年間保存する義務があるのですが、法律によれば買取る際に必ずしも古物台帳を作る必要はありません。例外があります。1回の買取で1万円以下の場合は古物台帳を作る必要がありません(これにも例外はあります)。

1万円以下、500円くらいでもブックオフやセカストなどで売る時は記入させられると思いますが、それは業界の自主ルールで行っているものです。書面に残すことで面倒事を避けるおまじないになるという意味もありますが。

件の買取店は古物台帳を残すつもりがなさそうなので、業界のルールに則らないし、最初から何が来ても、買取り価格を30%アップにしても、1万円以上で買取る気もないのでは?という印象を持ちました。本当のところはわかりませんが。

どうしてもネット買取を希望するのであれば、買取りまでの手順を確認して、明らかに手順が少ないお店は避けた方がいいんじゃないかと思います。

最後に

ネット買取りは売る側は便利ですが、買取る側はコストがかさみます。そのコストは誰かがタダ働きしているわけではないので買取り価格に反映されます。古書のような単価が低くどこにでも買取店があるものほど、ハッキリと買取り価格に影響します。

逆にネット買取りの方が得しそうなものもありますが、それは別の話し。