日本語では「決定的瞬間」と訳された、恐らく世界で一番有名な写真集の完全復刻版が発売します。
タイトルは「The Decisive Moment」。

- 作者: Henri Cartier-Bresson
- 出版社/メーカー: Steidl
- 発売日: 2015/01/31
- メディア: ハードカバー
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もちろん、アンリ・カルティエ=ブレッソンの代表作。
アンリ・カルティエ=ブレッソンって誰?なんて言うと私のようなサブカル糞野郎からはこれでもかというくらい嫌味な話を聞くことになると思うので、写真集発売のこの機会にググっておきましょう。
ブレッソンとは
ざっくりと言うと、ライカを使ったスナップ写真の超有名人。 むかし昔、カメラは大きく、またフィルムの感度も悪いため三脚に据えて撮っていました。
次第に、フィルムの性能がよくなり小さなフィルムでもそこそこキレイに写すことができるようになります。そこで、ライカは手持ちでも撮影できる小型カメラを開発。
ちなみに最初のライカ、ウルライカが開発された頃はフィルムは映画用のものスチルに流用していました。
小さなカメラ、ライカにより写真撮影の幅が広がり、それをもっとも活かしたのがスナップ。
写真館で撮るポートレートとは違うリアルな生活の中のポートレート、人が一瞬だけ見せる表情、動きの中で偶然現れた構図を写しとったのがアンリ・カルティエ=ブレッソンです。
それは三脚使ってカメラを構えていたのでは撮れない写真です。 これは画期的でありながら、写真というメディアが持つ根源的な魅力でもあります。
それを示した写真集が「The Decisive Moment」です。
日本の写真とスナップ
日本の写真界では木村伊兵衛、健康な頃の土門拳、森山大道、荒木経惟、梅佳代がスナップで有名で、中でも土門拳の「絶対非演出の絶対スナップ」はアマチュアカメラマンに大きく影響し、日本独特の写真文化が現在でも続いています。
日本独特というのは、真実を写す”写真”という訳語が定着したことにも現れています。 そのせいか、世界の写真界からは評価されにくい土壌を作ったような気もします。
それはともかく、梅佳代や川島小鳥の「未来ちゃん」のようにスナップという手法は現在においても、まだまだ新しく魅力的な写真を生み続けているのです。

- 作者: 梅佳代
- 出版社/メーカー: リトルモア
- 発売日: 2006/09/04
- メディア: 単行本
- 購入: 8人 クリック: 233回
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- 作者: 川島小鳥
- 出版社/メーカー: ナナロク社
- 発売日: 2011/03/22
- メディア: 単行本
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それらの遡り源流を探すと、どうしても行き着くのがブレッソンの「The Decisive Moment」です。
逃げ去るイメージ
今回発売する写真集は「The Decisive Moment」というタイトルで、日本語訳は「決定的瞬間」です。 しかし、元々はフランス語版が先に発売され「Image à la sauvette」というタイトルが与えられていました。
日本語でいうと”逃げ去る映像”とか”逃げ去るイメージ”と訳されることが多いのですが、”決定的瞬間”とは少しニュアンスが違います。
ブレッソンは瞬間を撮るというよりも、瞬間の中に現れる構図を重視しています。
例えば、ブレッソンの写真で最も有名な「サン=ラザール駅裏 」、水たまりの上をぴょんと飛び跳ねた少年の姿が水たまりに写り込んでいる写真、は何度も撮り直した末に完成したものです。
何度も撮り直したのは”決定的瞬間”を写すためというよりは、完全な構図を求めた結果です。
何度も撮り直すというやり方は土門件的な日本のスナップとは相容れないものがありますが、これにより写真表現が開けました。
まとめ
「The Decisive Moment」はエポックメイキングな写真集の金字塔なので凄く欲しい。
ちなみに、どのへんが完全復刻かというと表紙がマティスのコラージュというとこ。
偉そうに書いてますが、「決定的瞬間」の本物は、ボロボロになったものを一度だけ見せてもらったことがあるだけです。 貴重な写真集なんです。だから(高いけど)欲しい。

- 作者: Henri Cartier-Bresson
- 出版社/メーカー: Steidl
- 発売日: 2015/01/31
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