360万パワー

1977年生まれ

わけあってコスプレには詳しいので「着せ恋」のことを少し書く

販売されている衣装

着せ恋は実際のコスプレの状況をかなり忠実に再現しています。

暑くてコスプレが大変だったり、ヌーブラ二枚重ねだったり(ヌーブラ二枚重ねは廃れ6巻に出てくる着るタイプが中心になりました)。

もちろん、エンタメですからどこまでも現実を再現しているわけではありません。現実と最も離れているのは衣装です。

現在のコスプレは販売されている衣装を使う方が大部分で、自作派は少数。

なので「衣装をきれいに作れないからコスプレ出来ない」ということはありません。

作中の『ぬる女』みたいに、比較的マイナーで既製の衣装が販売されていないコスプレは自作することになりますが。

さて、最新刊(9巻)で既製の衣装であわせ(同じ作品のコスプレを一緒にすること)をする流れになりました。

さらっと書いてありましたが、既製の衣装のメリットとして「統一感」が挙げられていました。

既製の衣装は同じ衣装でも色やサイズはバラバラ。

例えば、画像検索をしてもらうとわかると思いますが、進撃の巨人調査兵団のジャケットの色はバラツキがわかりやすく、一人なら気にならなくても、あわせになるとバラバラさが目立ちます。

同じところで買えば、色のバラツキもなく統一感がある、というわけです。

ところで、販売されている衣装の多くは権利関係を処理していません。

権利関係を処理して販売されている衣装は少なく、そういった衣装がある場合は、あわせの条件として公認衣装の使用を求める方もいます。

少し前ですが、弱虫ペダルには公式グッズに各校のジャージがあったので、あわせのメンバーに公式ジャージ着用を条件とする方は比較的多かった印象があります。

他にユーリオンアイスも公式グッズにジャージがありましたが、こちらはコスプレに使われることはそれほど多くなかった印象があります。

公式グッズがあるなら必ず使うというわけではなく、レイヤー次第という感じです。

名前の変遷とかジェネレーションギャップ

6巻(その後9巻まで放置ぎみでしたが)でCOSボードというのが出てきました。

形を整え色を塗って鎧や武器などを作る、造形に使うものです。

昔はライオンボードという名前で、同じ製品がソフトボードという名前に変更され、同じものがコスボードという名前で販売されています。

ライオンボードと呼ぶ方は確実にコスプレ歴が長い方です。

他に名前が変わったものといえば、コスプレ雑誌。

現在はコスプレイモードですが、昔はコスモードでした。

コスモードと呼ぶ方はコスプレ歴が長い方です。

商品名の違いだけでなく、コスネーム(ハンドルネーム)も昔と今では違うと言われます。 昔は「名字+名前」式のコスネームを使う方が大半でした。ほぼほぼ全員が、という印象なくらい。

作中では男性レイヤーの「姫野あまね」がそれです。

現在は名字にあたるものを省いて「あきら」のように「名前」だけのコスネームの方が多いと思いますが、「名字+名前」にされている方も少なくありません。

また、姫野あまねは五条君と喜多川さんに「相方ですか」と聞くのですが(6巻)、この相方はちょっと前まではコスプレ界隈によくある概念でしたが、最近はほとんど使われていません。

「愛方」と表記もちらほら見かけましたが、今では検索しなきゃ見つからない程度に。

姫野あまねは作中では比較的レイヤー歴が長めのキャラですが、細かいところにレイヤー歴の差が出ています。

他に最近のコスプレで少なくなったものに厚底があります。

特に男装コスの場合は身長差を大切にするレイヤーが多く、身長差を作るために厚底の靴を履くことが以前は多くありました。

場合によっては、市販の厚底では足りないから自作の靴底で身長を盛ることも(靴底が15センチくらいある)。

コスプレイベントでは靴底が壊れるレイヤーが一人くらいはいたものですが、最近は極端な厚底を使われる方は少なくなりました。

厚すぎる厚底は歩く時に靴底を引きずるため床がひどく汚れます。そのため施設によっては厚さの制限があったり、禁止されることもあるので、廃れてきたのかもしれません。

厚底に代わり、10センチくらいのヒールをブーツカバーでヒールを隠して使う、みたいな感じが多いでしょうか。

一方で、私服で厚底を履くレイヤーは増えた気がします。作中でもちょいちょい描かれています。

もう一つ、最近のコスプレから消えつつあるのが名刺です。

名刺は作中、(9巻時点で)全く出てこないので割愛します。

あわせについて

9巻の最後に厚底を履いたジュジュ様がドンッと登場します。

直前に五条君が「物凄く拘りが強い方なので」と少し心配そうにしていますが、これも実際のコスプレにありそうな状況です。

コスプレの撮影は交流メインと撮影メインに大きく分けることが出来ます。

ガッツリ撮影しつつ交流もしっかりやればいいじゃない、と思われるかもしれませんが、無理です。

どうしてなのかわかりませんが、無理です。

気心のしれた二人、三人ならともかく、作中のように勢いで決めたあわせに、ジュジュ様のように拘りが強いレイヤーは参加しません。

上手く行かないと経験上知っているので、誘うこともありません。

コスプレを知っている方ならそう考えるはずで、9巻のラストはコスプレを知っている方なら誰もが驚いたと思います。

しつこいですが、現実のコスプレなら絶対に上手く行かないあわせです。

なので、その先がどうなるのか楽しみです。

実際のコスプレであわせはどうなのかというと、撮影より交流の比重が高くなります。

特にあわせの人数が増えるほど交流メインになります。

なので、ジュジュ様のようにイベントには参加せず、スタジオで少人数で撮影するレイヤーは少数派ですが存在します。

ジュジュ様とは違い、イベントに参加して交流はそっちで、ガッツリ撮影する時は少人数で、と切り替える方もいます。今は、こういう感じのレイヤーが中心かもしれません。

コロナもあり、イベントでもスタジオでも交流メインという方は少数になったかも。以前は、それなりに多かったのですが。

着ただけ

単行本の6巻に、男性レイヤーの女装について書かれています。

作品ではアコスタというコスプレイベントでの男性レイヤーの女装ルールが少し書かれているのですが、どうしてそんなルールがあるのかを少し解説します。

男性レイヤーにもいろいろとあって、女性っぽく見えるように目指すタイプ、逆に女性っぽく見えないように目指しているのかこの人は?ってレイヤーもいます。

想像しやすいように具体的に言うと、見た目はおじさんだけどプリキュアの衣装を着ている、そんな感じです。これは例えではなく、実際にいます。

コスプレをする時はウィッグやメイクでキャラに寄せるものですが、おじさんに限らず寄せる気がまるでないタイプが「着ただけ」です。

(あわせによっては黒髪キャラでも地毛禁止、ウィッグ必須なんてルールを設ける場合も) アコスタのような街中で行うイベントや、公園で行うイベントでは、プリキュアの衣装を着ただけのおじさんが外部の人に見られないよう、男性レイヤーの女装についてルールを設けているようです。

外で行うコスプレイベントでは(イベント参加者ではないたまたま居合わせた)小さい子供がプリキュアセーラームーンのレイヤーと記念撮影をする、なんてことがあります。

そんな小さい子供に、プリキュアの衣装を着ただけのおじさんを見せたくない、そんなルールです。

コスプレ界隈には「着ただけ」という言葉があります。

文字通り衣装を「着ただけ」という意味の場合もあれば、コスプレのクオリティが低いもの指して「着ただけ」だったり、メイクをキャラに寄せていないコスプレを「着ただけ」と呼ぶ場合もあります。

作中には学園祭の時にハロウィンのコスを指して「買って着ればいいだけだった」ってセリフが出てきます(8巻)。

レイヤーがハロウィンのウェイ勢のコスプレを「着ただけ」と呼ぶこともあります。

レイヤーがやっているコスプレと区別するために「仮装」と呼んだり。

ただ「仮装」は検索避けなのか、ハロウィンに限らず時々使われる言葉で、ニュアンスはその時その時で違ってきます。

ただ、他の誰かのコスプレを「仮装」と呼ぶのは侮蔑的だったり煽りだと捉えられると思うので、止めておきましょう。

ハロウィンの時には「着ただけ」以外にも「ゴスロリ」という、レイヤーあるあるなセリフがありました。

どういう意味かというと、雫たんのコスを「ゴスロリ」と雑に呼ばれるのがレイヤーあるあるです。

ちょっと前ですが、「ローゼンメイデン」のコスプレも「黒執事」の駒鳥衣装も全部ゴスロリで一纏めにされる感じです。

レイヤー側が使うと角が立つ「着ただけ」ですが、上手くかわしながらもレイヤーにはわかるセリフの使い方になっています。

着せ恋は忠実にコスプレのルールを守っている

着せ恋は実際のコスプレをかなり忠実に取り入れてあります。特にルールに関しては誰も文句をつけないくらい。

さらっと程度に触れているものから、しっかりと書いてあるものまで色々ですが、コスプレに関するルールを忠実に守っています。

コスプレ界隈はマナーやルールに厳しく、それでいて明文化されていないのに守らないとTwitterで学級会が開かれるのですが、学級会を開かせまいと危機感を持たれ取材し制作しているのだと感じられます。

着せ恋を読んでいればゼロからコスプレを初めてもきっと大丈夫、ルールを破っていると糾弾されることはないでしょう。

コロナ以前からコスプレ人口は減っていて、恐らくピークは10年近く前で、恐らく2015年前後。ピーク時と比較するとコスプレ人口はもしかしたら半減くらいじゃないかと思うくらいです。

コミケのレイヤー参加者は増えていたので詳しくない方はコスプレ人口が減っていることを意外に思われるかもしれません。コミケ参加者が増える一方でコスプレ専用スタジオはどんどん減っていて、趣味のコスプレは減り商業化されたレイヤーが増えたと捉えています)

なので、着せ恋をきっかけに、コスプレを初めてみようという方が増え、またコスプレが盛り上がればいいなと思っています。

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